「ユーリー・ノルシュテイン展」

切り絵を使った詩情豊かな世界をアニメーションで描くユーリー・ノルシュテインと、彼の作品では欠かすことの出来ない美術監督フランチェスカ・ヤールブソワ(奥さん)による『ユーリー・ノルシュテイン展 〜ノルシュテインとヤールブソワの仕事〜』が三鷹の森ジブリ美術館で5月9日まで開催中です。
この展示、1月にも行ったのですが、もう一度じっくり観たかったのと、土星座(映像展示室)の上映に『話の話』が加わっているので(1月は『霧の中のハリネズミ』と『アオサギとツル』)、再度チケットを確保し、ジブリ美術館へ行きました。天気も良かったので、木漏れ日の中、吉祥寺駅から井の頭公園沿いを歩く道のりはとても清々しかったですよ。(ちなにみ三鷹駅からだと、専用のバスが出てます。)

館内には、イメージスケッチや絵コンテ、エスキースのほか、映画撮影に使用した切り絵素材を組み合わせたコラージュ、切り絵素材を組み立てて立体的に表現したマケット、木製の箱の中に、絵を描いた切り絵をガラスに貼ったものを数枚、奥行き方向に並べて立てて構成してあるパノラマボックスが美術館の渡り廊下や通路のスペース、壁面の展示物(ジブリ作品のスケッチ等)に折り重なるように展示されていました。館内の隙間空間を有効的に利用した、どこにあるのかすぐには分からないようなこの展示方法により、ジブリ美術館の魅力でもある『発見する楽しみ』が演出されています。今回は、前回見落としてしまった2階渡り廊下前のドーム型のくぼみに設置されたマケット(『マドンナとオオカミの子』)を発見することができました。
展示作品に関しては、ひとつひとつがアート作品と呼べる完成度の、フランチェスカ・ヤールブソワによるエスキースも素晴らしかったし、ノルシュテインによる映像作品のイメージを立体化したマケット(特に『話の話』の豆電球1つによる『踊る人たち』の演出、『外套』の『夜のネフスキー大通り』のイメージを高さ43cmx幅150cmのスケールで構成した作品は圧巻)や、何枚ものガラスのレイヤーに切り絵を貼付けて構成してあるパノラマボックスは、ノルシュテインが実際に映像作品をつくる時の手法に近いせいもあり、奥行き感のある素晴らしい作品でした。(特に『霧の中のハリネズミ』の『ハリネズミとミミズク』や『霧の中のハリネズミと馬』は、幾重も重なる霧のレイヤーによって演出される世界に陶酔してしまった。)