Luca Presentsチェコ・アニメナイト

整理番号付きチケットなので、安心して23時頃銀座テアトルシネマに。エレベーターの扉が開くと、人、人、人。。。ホワイエ部分が狭いこともあって凄いことになってました。(^-^;)
客層は、オールナイトということもあって、若い層が中心で、6〜7割、女性が占めている印象。
館員の方の誘導により整理番号順に館内へ、番号が真ん中辺だったこともあり、好きな視野角の席は確保できなかったが、まずまずの場所をキープ。
座席はゆったりめで良好、スクリーンも縦4.1m×横8.2mとかなり大きく感じる、渋谷の映画館だとシネマライズの縦4.3mに近い。先月、チェコアニメ特集を観に行った、パルテノン多摩もそこそこスクリーンが大きいと思っていたが、それよりも一回り大きい印象。
今回は、ヤン・シュヴァンクマイエルの作品を大スクリーンで観たいという願い(ガキっぽい理由?!)から、視聴に踏み切ったので、Cプログラムに期待大。あと、初見の作品が多いBプログラム、巨匠2人の占めるAプログラム(中でも初見の『楽しいサーカス』)に全集中力を。余力があれば、Dプログラムも。特別上映の『冬の日』に関しては、オールで一番キツイ時間帯で、このプログラムはかなり拷問なので、発句のユーリ・ノルシュテイン〜アレキサンドル・ペトロフまで意識があれば御の字という計画で挑む?!
が。。。

Aプログラム開始から、思わぬ伏兵が。近くに座っていた人が最初の『豚飼い王子』から寝始める。しかも、軽く寝息有り。冗談かと思ったのだが、その後も寝続ける。(余談だけど、結局この人は、Cプログラムでちょっと起きかけたので一応、チェコアニメを見る気があったようだが、その後の起きると見せかけ、寝ることを繰り返し、Dプログラム終了。そしてなぜか、終盤8割の人が寝たと思われる『冬の日』の時に、起き上がり眠気と格闘しながらも、観てました。事情は良く分らないけど、物凄く気分が悪かった。椅子に座れず座布団で鑑賞していた人や、観たくても観れない人もいるのに。。。)そんなこともあり、戸惑いから序盤のティールロヴァーは、100%作品に集中することはできなかったけど、再度スクリーンで見れたのは良かった。特に『二つの毛糸玉』は毛糸と裁縫道具タチの織り成す愉快な展開に釘付けで、最後に毛糸が描く『KONEC』という文字まで目が離せなかった。
トルンカの作品は、名作『動物たちと山賊』、『手』も良かったが、初見の『楽しいサーカス』が印象的。クマの曲芸も愉快だけど、魚の空中ブランコ?!や途中に挿入される無表情な観客の拍手(しかも、色彩がラウル・セルヴェの『夜の蝶』のような雰囲気)、のっぽの三人組?!の曲芸(途中、一瞬イシュ・パテルの『ビーズゲーム』っぽい雰囲気に)とかなりツボ。

Bプログラムは、『クルテク・もぐらくん、ちかてつでぼうけん』のうさぎがサメに食べられるシーンで館内大爆笑。『視角の外』は初見だけど、こういうフレームアウトしていくアイデアはすごく好き。『パットとマットクロスワードパズル』も初見だけど、目を疑いたくなるようなオモシロイ展開に感服。『ぼくらと遊ぼう!』シリーズは、最近DVDのVOL.2を中古購入して、2.5次元?!の世界に魅了されているので、初見の『おかゆの話』に期待大。この話も期待通り、無茶苦茶な展開、そして手が伸びる伸びる〜。『ナイトエンジェル』は、観るたびに寝てしまうが、(なぜ??)今回は集中して最後まで観れた。この作品、ジャック・ドゥルーアンのピンスクリーンの技法が視野角いっぱいに幻想的な世界をつくり出す大画面で観るのが良いみたい。不思議な雰囲気を堪能。

そして、今回自分の中で、期待大のCプログラムへ。
チェコアニメの存在を知ったのが去年なので、ヤン・シュヴァンクマイエルの作品を今回のような大スクリーンで見れるのは嬉しい限り。(幸い、ラピュタ阿佐ヶ谷アニメフェスで、『男のゲーム』、『対話の可能性』はスクリーンで観れましたが。)
『ジャバウォッキー』は、いつもより1.5倍くらい、人形から小さい人形が溢れ出てたし、おもちゃの兵隊タチも2倍は行進してたし、ナイフ付き人形は最後にいつもより3倍は血が溢れていました。(←※注:完全に誇張表現です。)DVDをテレビで観るより、プロジェクターで観るより、触感が疼いた。ゾワゾワ感を堪能。
『レオナルドの日記』は、1995年に庭園美術館で開催された『レオナルド・ダ・ヴィンチ人体解剖図展』に行って、その緻密な絵を直に見たことがあるので、その絵をモチーフにした映像に出会えたこと、そしてスクリーンで見れたことは自分の中で少し感慨深いものがあった。レオナルド・ダヴィンチ特有の鏡面文字もちゃんと見えたし、最後の騎馬隊のからみの怒涛の展開は圧巻。大満足。
ジー・バルタの『手袋の失われた世界』は、トルンカの『手』観た後だけにちょっと、複雑な部分もあったけど、(特に手袋タチの行進シーン)館内の一部が爆笑していたおかげ?!もあり、楽しく観れた。この作品、いろんな映画のパロディらしいんだけど、前見た時は『アンダルシアの犬』しか分らなかったので、今回リベンジ?!、チラシの説明のおかげで、 『ブレードランナー』、『未知との遭遇』らしき場面を確認。あとフェリーニのもありますよね?!(ちょっと弱気)
セコの『本棚の世界』は、それぞれの本が作り出すエピソードが何度観ても楽しい。知識豊富な人はより楽しめるんだろうな。『マキャベリ』のエピソードで爆笑してた人が館内にいて、ちょっと羨ましかった。(無知なもので。。。)あと、本同士が食い合うシーンは、シュヴァンクマイエルっぽくて好き。食い合う本の背表紙には『プラトン』と『アリストテレス』と書いてあるらしい。*1あと、この作品の同年にシュヴァンクマイエルの『対話の可能性』がつくられたっていうのもオモシロイ。
『僕の友達はチクタクいう』は、ホンモノ?!の建物の映像を織り交ぜ、現実世界で起こっているような錯覚を起こすようなつくりがイイ。あと、壊れた時計が、チクタクいうようになり、お礼?!に自分の歯車を使って、空に歯車タチの競演を披露するシーンは何度見てもイイ。
というわけで、Cプログラム満喫。

Dプログラムの新世代の作品は、DVDを購入して一通り見てはいるものの、あまりオモシロイという印象はなかったんだけど。。。
これらの作品、思いっきりスクリーン上映を意識してつくられていることに、今回気づく。特に後半の3作品。寝てもいいと思ってたのに、いつの間にか眠気が吹き飛んでいたのは驚き。(^-^;)
まず、『足跡』は、砂を使ったアニメーション。パルテノン多摩でのチェコアニメ特集でも観たが、やはり砂の細やかな部分まで表現されるスクリーン上映が合う。ボールが転がってくるところと、女の子がケンケンするシーンが好き。最後に雨に砂が打たれてミンチっぽくなるシーンを見て、シュヴァンクマイエルの『対話の可能性』の1シーンを思い出してしまった。(^-^;)砂のアニメーションといえば、コ・ホードマンの『砂の城』も好き。あと、イタリアのミッゼーリ・スタジオのサンドアニメを見てみたい。(Casa BRUTUS no.38イタリアの新ベスト3を発表しま〜す!特集P70を見てつい。)
クリムトの『魔法の鐘』は、かなり好き。DVDで観た時はこれ程まで思わなかったけど、今回改めて良さを痛感。音楽とコミカルなキャラクターの調和がとても愉快。重力を感じさせないレリーフアニメとの相性も良く、思わずラララララ〜ランララララララ〜と口づさんでしまいそう。個人的には、屋根の上のムンクの『叫び』似の男の人と猫のやりとりが好き。
『3人のフーさん』は、テンポの良い音楽にのり、中国人風のキャラがどんどん殺され、最後はSF?!な展開に。冒頭の『この作品の中で中国人は殺されていない』という感じの但し書きがニクイ。
ここまでの作品は、スクリーンサイズが4:3のスタンダードサイズだったが、これ以降3作品は、ヨーロピアビスタサイズに。サウンドもドルビー対応で、かなりの迫力。
『原始哺乳類』は、リップシンク(台詞に口の動きを合わせる技法)を取り入れているらしいんだけど、全く気づかないくらい、迫力があった、チェコアニメジュラシックパーク?!(安直な表現しか出来ない自分に泣ける)と思わせるくらい劇場を意識したつくりになってた。
『大いなるくしゃみ』は、カメラのアングルを変えながら撮影されているので、よりダイナミックな展開に。CGを全く使っていないのは圧巻。
ピクシレーション好きなので『メカニカ』は、観てて楽しいがラストの展開には???

まとめ?!:初見の作品はもちろん、観たことのある作品も、違う魅力を発見できたのは収穫。新世代の作品は、今回、映画館で観てはじめて良さを感じた。逆に、ティールロヴァートルンカシュヴァンクマイエル、セコ等は、観る度に新たな発見があるので、時代背景も含めて、チェコのことをもっと知りたくなった。



ちなみに、『冬の日』は、ユーリー・ノルシュテインペトロフまででダウン、(予定通り?!)途中で起きて、久里洋二作品の背景がすごいグラデーションになっていることにビックリしながら、再び寝、コ・ホードマン作品から起きて山村浩二川本喜八郎作品まで見て、ドキュメンタリー部分は完全睡眠。
スタッフロールで目覚めて、さわやかに帰宅しました。(^-^)

*1:エスクァイアの『チェコアニメの巨匠たち』P94参照