Zahrada(ふしぎな庭)

unun2004-05-07

トゥルンカの『DVAKRAT SEDM POHADEK(7×2のおとぎ話)』と、この『Zaharada(ふしぎな庭)』はかなりお気に入りの絵本です。
前者は、各ページにかわいらしいイラストがちりばめられる童話集です。チェコ語なので内容は分からないのですが、力強いタッチで描かれているのにとっても柔らかな印象を受ける絵を見ているだけで幸せな気分になれます。人形アニメ作家としてのトルンカしか知らなかったので、初めてこの絵本を見せてもらったときはかなりの衝撃でした。
その後運良く、この絵本と『Zaharada』を手に入れることが出来たのですが、こちらもステキな絵本です。幻想的な色彩と溜息が出そうな程繊細なタッチで描かれる絵を見ていると、ふしぎな世界に吸い込まれてしまいそうです。
ちなみに、この本の日本語版『ふしぎな庭』 (第3刷)をチェコ版と比べると、印刷の影響なのかちょっとぼやけた印象を受けました。あと原色が強調されているようにも感じます。
日本語版の初版は印刷製本をアルバトロス社(チェコスロバキア)でされていて、チェコ語版の印刷に近いようなので、原画を元に印刷された可能性が高そうです。


印刷の違いを詳しく調べましたので興味がある方はこちらを読んでみて下さい。
◆『ふしぎな庭』-印刷方法の探求
http://d.hatena.ne.jp/unun/20040603


追記:『イジートゥルンカ展』に行ってきました。図録【イジートゥルンカ展】の『イジートルンカの生涯』のところに興味深い文章が載っているので引用させて頂きます。


49年にはヘレナ(子ども3人)と離婚してヴェンツェスラヴァ(子ども2人)と再婚していたが、3人の子どもたちを可愛がるあまり、この事実を隠して以前と同じように、父親としてヘレナと子どもたちの家にも帰っていた。2つの家族を持ち、2つの家庭を行き来するという複雑な状況は長く続き、次第に彼を疲れさせていった。1957年に、トゥルンカは18年間住んだコシージェのトゥルボバーの家を売り、ヘレナには4区のポドリを家に買い、ヴェンツェスラヴァとは小地区(マラー・ストラナ)のカンパに住んだ。トゥルボバーの家を出たことは、後にトゥルンカにとって埋めることのできない大きな喪失になった。『アンデルセン童話からインスピレーションを得て作られたような雰囲気の詩的で古びた家・・・・・・』トゥルボバーの家で暮らした時期は、トゥルンカが最良の仕事をした時でもあった。
(略)
1962年、トゥルンカは50歳の記念出版に、自分でも文章も絵も手がけた『ふしぎな庭』を出版した。これは暗喩的な作品で、登場する人物はトゥルンカの5人の子どもを思わせるし、舞台としてトゥルボバーの庭がそのまま描かれている。
(図録【イジートゥルンカ展】の『イジートルンカの生涯』より)

寂しげでシュールな作品の多い、晩年(1960-1969)の中では、一際輝いて見える『Zaharada』。この作品は、トゥルンカにとって思い出の詰まった大切な絵本だったのだと思います。それだけに『イジートゥルンカ展』で『Zaharada』の原画が展示されていなかったのは、本当に残念です。今回の展示で紹介されていない作品もまだまだたくさんあるので、いつか『Zaharada』の原画も含めた大規模な回顧展が開催されることを願っています。

関連:
◆【イジー・トゥルンカ展】
http://d.hatena.ne.jp/unun/20040509
◆図録【イジー・トゥルンカ展】
http://d.hatena.ne.jp/unun/20040510

関連LINK:
◆『Zahrada』(K版)を購入できるショップ- 【PRECIOUS BOOKS】
※現時点(12/14)でまだ取り寄せ予約が可能なようです。
 【国際子ども図書館】
前にも書きましたが、上野にある国際子ども図書館の2階の第二資料室(外国で刊行された児童書や関連資料が置いてある)のチェコのコーナーにトゥルンカの絵本が何冊かありますよ。(残念ながら『DVAKRAT SEDM POHADEK』と『Zaharada』はありません。)他にもチェコの絵本も多数あるし、建物自体も見所が多いので、上野に行く用がある方は立ち寄って観て下さい。

*1:図版【イジートゥルンカ展】の巻末に書籍リストがあるのですが、そこに載っている『Zahrada』の表紙は右上の写真とは異なり、日本語版の表紙の絵と同じなので、この絵本は再版されたものだと思います。