テディベアのルドヴィック

  • ユーロスペース
  • コ・ホードマン監督作品
  • 〈冬〉『雪の贈り物』(1998/14分15秒)
  • 〈春〉『ワニのいる庭』(2000/10分) 
  • 〈夏〉『雪の贈り物』(2001/11分40秒)
  • 〈秋〉『雪の贈り物』(2002/12分15秒)

『テディベアのルドヴィック』を制作したコ・ホードマンは、カナダ国立映画制作庁(NFB)のディレクターを務める、カナダを代表する立体アニメーション作家です。
コ・ホードマンは、実験映像の開拓者、ノーマン・マクラレンに影響を受けてオランダからカナダに移住したということもあり、多様な素材(積木、粘土・紙・布等)と、テクニックを駆使して、新しい作品を創り出すことが好きなようで、春夏秋冬の四季で綴られる『テディベアのルドヴィック』は、当初、冬にあたる『雪の贈り物』 の1話のみで完結する予定で、続編をつくることに乗り気ではなかったようです。
『雪の贈り物』をプロデューサーが気に入り、ルドヴィックの他の作品も作って欲しいという要望に、コ・ホードマンは戸惑いながらも、ルドヴィックの人生には多くの新しいことが起こるはずだと考え、4本のシリーズ(計48分)に取り組むことに。しかも、監督・アニメーション・撮影まで全てをたった1人でこなし、5年!!の歳月をかけて完成させたそうです。*1
立体アニメーションって、カメラを固定させていることが多いですが(←思い込み)、『ルドヴィック』(他のコ・ホードマン作品もそうですが)はとにかく、カメラが動き、アングルも変わるし、フォーカスも奥から手前に移ったりと、多様。ものが持つスピードも、紙の動物の動き(ゾウ、ワニ、キリン等)の表現が使い分けられていたり、緩やかな落ち葉の動き(ガサガサと移動する動も)や、アヒルの愛らしい動き、そしてソリのスピード感溢れる滑り等、正確に表現してあるし、登場する手づくりのオルゴール、人形、紙製の動物、蓄音機、木馬等の小物のディテールもこだわりがあり、観ている人が作品に入り込みやすいような工夫が随所に施されています。
小さな子供むけの作品が少ないと常々感じているコ・ホードマンが、お孫さんとの暮らしの中で『ルドヴィック』のアイデアを生み出し、それから5年間、この作品に注いだ情熱は相当なものだと思う。もしかしたら、こういう緻密な演出は、1人ですべてをこなすという、職人的ナ業によって初めて成しえることなのかも。
余談(ちょっとネタバレ):この作品、子供向けにつくられているようですが、とにかく細かいところまで作りこまれているので、大人も色んな視点で観られると思いますよ。ソリとの接触シーンは衝撃的だし、落ち葉が動き出すシーンや、砂の城の中にルドヴィックが消えるシーンはシュールだと感じたりと、観る人によって色んな発見がありそう。


追記:テディーベアってかわいいイメージですが、
なかにはちょっとコワイのもありますね。
http://www.witney-jp.com/

*1:パンフ【コ・ホードマン監督に聞く素朴な質問】より