瀬尾光世[1](計89分)

(※文中敬称略)
背景を持永只仁が担当している『アリチャン』を観たかったので行って来ました。『アリチャン』は日本初のマルチプレーン(多層式動画撮影台)採用作品で、持永只仁が設計図を引き、瀬尾光世が貯金をはたいて建具屋さんにつくらせたそうです。*1マルチプレーンによって、手前の花に焦点を当てて背景をぼかしたり、アリチャンが移動するときに、近景、中景、遠景それぞれ異なるスピード(手前が早く、奥が遅い)表現されていて、奥行きのある空気感や、遠近感のある映像作品になってました。
あと、『お猿の三吉』や『のらくろ』をはじめ他の作品も、同じコトを繰り返したり、ユニークな動きをするキャラがひたすら笑いを誘ってくれて楽しめました。

プロキノで線画を担当した後、京都の政岡憲三のもとでトーキー・アニメーションを志した瀬尾光世(1911−)は、1933年には独立して日本マンガフィルム研究所を興す。人気のキャラクター「お猿の三吉」や「のらくろ」を次々と映画化、1937年には記録映画でも名高い芸術映画社に入社した。アリの子どもの改心を暖かく描いた秀作『アリチャン』は、後輩持永只仁が開発した四段多層式(マルチプレーン)の撮影台を使用して作られた最初の映画として知られる。
お猿の三吉 突撃隊(‘34・9分・35mm・白黒)
元禄恋模様 三吉とおさよ(‘34・8分・35mm・白黒・無声)
のらくろ二等兵(‘35・11分・35mm・白黒)
のらくろ一等兵(‘35・10分・35mm・白黒)
いなばの国の兎さん(‘35・7分・35mm・白黒・無声)
テク助物語(日の丸旗之助 山賊退治)( ‘38・10分・35mm・白黒)
あひる陸戰隊(‘40・13分・35mm・白黒)
テク助物語 四十匹の狼[改編版](‘40・10分・35mm・白黒)
アリチャン(‘41・11分・35mm・白黒)
日本アニメーション映画史より)

*1:『ANIMAIL 歴史部会版第2号』より。この書籍、東京国立近代美術館フィルムセンターの受付で売っています。