カルパテ城の謎

unun2004-04-16


結婚を目前にして誘拐された美貌の歌姫ベルデを思い悲嘆にくれるオペラのトップ歌手テレック伯爵は、カルパチア王国へと旅に出た。途中立ち寄った村での噂から、テレック伯爵は村人からも恐れられている不気味な古城”カルパテ城”に、ゴーグ男爵に誘拐されたベルデがいるのではという希望を持って向かう。声は聞こえ、姿は見えども会う事の出来ぬ、そんな花嫁を無事救出できるだろうか・・・。
(DVDジャケットより抜粋)

ジュール・ベルヌの小説を元にした、リプスキー監督の後期の傑作、『カルパテ城の謎』 を観た。
この映画、先に観たリプスキー作品の『アデラ』 のキャスト、ミハイル・ドチョロマンスキー(ニック・カーター役)とミロシュ・コベッキー(クラツマル男爵役)、ルドルフ・フルシンスキー(レドビナ警部)が出演しています。あと、若いし眼鏡をかけていないので気づきにくいけど、ヤン・シュヴァンクマイエルの『オテサーネク』 のホラーク役、ヤン・ハルトゥが森番 (ドチョロマンスキートと共にカルパテ城に乗り込む役)として出演しています。*1

今回も、ドチョロマンスキー(テレック伯爵)は、真顔でとぼけたギャグを連発。役柄は、オペラのトップ歌手ということになっているので、一応美声ではあるものの、その歌声によって、周りのものを次々と破壊してしまうという恐ろしい側面も併せ持つ。オペラ歌手になるのを反対していた父親を説得するのも、この凶器のおかげ?!で不幸を招きながらも説得?!。本人は悪びれるそぶりもなく、いたって平静なのがおかしい。
また、テレック伯爵の婚約者である歌姫ベルデの美声に魅了され、その歌声を永遠のものにしようとするゴーグ男爵(ミロシュ・コベッキー)も一癖ある役柄で、おとぼけ伯爵とのやり取りには妙な緊迫感?!があって愉快。
あと、劇中に登場するへんてこな美術は、特殊効果にヤン・シュヴァンクマイエルが名を連ねていることもあり、見所満載。
巨大な目玉形の監視カメラや耳の形をした盗聴器のオブジェ、仕掛け満載のカルパテ城の内部や、ルドルフ・フルシンスキー扮するオーファニック教授がつくり出す、リンゴを浮かす無重力装置や、ロケットも愉快だし、シュヴァンクマイエルの演出による教授の義手の変形シーンも必見。

リプスキー作品って、結構バカバカしいネタの為に、へんてこな美術を物凄く真剣につくっているから、普通の作品だと完全に浮いてしまいそうなシュヴァンクマイエルの独特な映像が妙に馴染んでいて楽しいし、出演している俳優もくだらないことを、まじめにやっているので、そのギャップについつい笑ってしまう。
『アデラ』 、『レモネード・ジョー』 は、笑いまくってしまったし、『カルパテ城の謎』 に関しては、前半おとぼけぶりが、やや過剰で失笑してしまう場面もあったけど、後半はかなり楽しかった。どうやらリプスキー作品、ツボみたい。

追記:『カルパテ城の謎』 は『アデラ』から4年後の作品なのに、ミハイル・ドチョロマンスキーがやけに老けて見えるのは気のせいかな???

*1:オテサーネクのパンフ参照。あと『スイート・スイート・ビレッジ』 にも出演。